1.ウェザリング(風化)とは?
ウエザリング(風化)は、気候に対する材料、製品の劣化反応であり、製品にとって好ましくない製品機能の早
期減退を引き起こします。お客様は、劣化が避けられない製品の維持に、また、劣化する製品の交換に年間、
何億ドルも費やします。屋外環境に暴露した結果、不合格となる材料が、全コストのかなり大きな部分を
占めています。
風化により劣化した材料
当社は材料の耐久性を評価するために化学的、又は機械的安定性と耐候性試験により製品機能の早期減退を防ぐことを試みました。製品開発のためには、これらの試験を正確に設定し、実施する方法を理解することが極めて重要です。劣化を引き起こすキー・ファクター (主要因) が認識できれば、ウエザリング(風化)を理解する上で良好なスタートを切ったことになります。
当社の様々な耐候性試験

屋外自然耐候性試験
実験室促進耐候性試験
屋外自然促進耐候性試験
全構成製品試験
2.ウェザリング(風化)の要因
ウエザリングにおける三つの主要因は、太陽放射 (光エネルギー)、温度、水 (湿気)です。しかし、タイプの異なる太陽放射、異なる湿度条件 (水と湿気) と異なる温度サイクルに暴露することで材料劣化に大きな影響を与えますが、各々の要因が“どの程度”材料の劣化に影響を与 えるかということではありません。
また、これらの要因は、風が運ぶ汚染物質、生物学的現象、酸性雨といった二次的効果とともに“ウエザリング”を引き起こす作用に影響を及ぼします。
太陽放射
太陽から来る放射エネルギーは、電磁波として宇宙を旅してきたフォトン (光子) からできています。そのエネルギー (E) は次の方程式から求めることができます。ここでは、周波数(ν)、プランク定数(h)、真空中の光速度 (c)、波長(λ) となります。
この方程式の関係は短波長が高フォトン(光子)エネルギーと関連していることを示します。(下のグラフ参照)これは、太陽放射の結果として、どのように材料が劣化するのかを解説する上で、大変重要な概念です。

地表に到達する太陽放射は、295から3000ナノメートル (nm) 間の波長から成り立っています。ナノメー
ター (nm) は10 億分の1 メートル (1 x 10-9 ) です。この地上太陽光は、一般的に紫外線 (UV)、可視光線 (VIS)、赤外線 (IR) の三つの波長範囲に分けられます。太陽スペクトルの中で295~400nm の波長域が紫外線 (UV) とみなされています。これは、全放射の 4 ~ 7% に相当します。成層圏のオゾン吸収 (成層圏中における吸収)は、295nm 以下のすべての放射エネルギーを吸収します。超高感度装置では295nm 以下の放射を検出できるかもしれませんが、その量は多くの専門家によって取るに足らない量と認識されています。

ASTM G 113-94、「非金属材料の自然及び人工ウエザリングテストに関する専門用語」 によると、紫外線 (UV) は、可視光放射よりも短い波長域の放射とありますが、紫外線の波長範囲や補助的な要素を完全には定義していません。しかし、
CIE (国際照明委員会)、E-2.1.2委員会では次のように分類しています。
UV-A 315 ~ 400nm
UV-B 280 ~ 315nm
UV-C < 280nm
可視光線 (人間の目で認識できる放射) は、400から800nm で、太陽スペクトルの、半分より上の部分で
構成されています。太陽放射のおよそ 40% は800nm を超えた赤外部に含まれます。
UV(紫外線)光は、どこで終わり可視光は、どこから始まるか?
スペクトルの紫外線部と可視部の境界は、情報源(業界)により異なります。ある情報では境界を400nm 、ある情報源では385nm 、また、他の情報源では380nm としております。ところが、このことは一方においては取るに足らないことと考えられており、暴露が屋外条件であろうと、人工条件であろうと、露光量を計算する際に必ず理解できるものであります。385nm の境界と400nm間の違いは 25% 以上で、この違いは、材料の寿命を評価する際に極めて重要です。
各種情報源により定義された波長範囲表です。これらの範囲は放射計の精度により、又は実験室ウエザリング促進装置のパラメータを制御することで定義できます。
太陽放射についての解説を進めるに当たって、いくつかの用語について定義しなければなりません。
放射照度は、表面に照射された単位面積当たりの放射束として定義することができ、一般的に W/m2 で表示されます。このパラメータを使用する場合、測定を行ったスペクトル範囲、つまり、295~3000nm (全太陽光)、又は295~400nm (全紫外線) のようなスペクトル範囲、又は、そのスペクトル範囲で計算した測定値を表示する必要があります。もし、狭い範囲の波長に注目するのであれば、W/m2/nm 単位で測定した
分光放射照度を適用することになります。ウエザリングテストに関しては、概念として、時間よりもJ/m2 単位で表示される (分光) 放射照度の時間積分値である放射露光量の方がより重要といえます。大部分の
放射露光量は、容易に関係づけることができ、 kJ/m2 、又は MJ/m2 に変換されます。さらに、どのように指定された放射量についてもスペクトル範囲を決めるべきものと考えます。
現在では上記の表の定義を使用し、分光分布、及び分光分布 (SPD) グ゙ラフの導入が可能となりました。
分光分布 (SPD) グラフでX軸は、太陽スペクトル中に見られる放射波長を表し(上記グラフ参照)、グラフのY軸は、各波長における放射照度を表します。グラフの曲線は、自然太陽光の波長範囲と各放射波長と関連した放射照度を示します。グラフ上で自然太陽光の曲線を見ると、295nm以下の放射はないことが分かります。様々なウエザリング用人工光源と自然太陽光との比較を行うとき、このようなSPDグラフを理解することは、非常に重要です。
ラングレー
他の放射露光量の測定単位として、時折 “ラングレー” を使用することがあります。ラングレーは、被照射面
の1cm2当たりの1グラム・カロリーに等しい全太陽放射エネルギーの単位で、1ラングレーは、放射露光量 0.04184 MJ/m2に相当します。この用語は、太陽スペクトルの全波長域の意味を含んでいるため、“UVのラングレー”と言う用語は存在しません。又、このラングレーの用語は、自然太陽光に適用できるだけで、人工光源には、適用できません。
太陽光の中で“入浴”
太陽放射測定に使用される用語は、満水にした浴槽と同じと考えることができます。放射照度は蛇口から出てくる水の速さ、放射露光量は一定時間に浴槽に入っている水量、波長範囲を限定している分光放射照度は浴槽を満たしている水の水質です。
太陽放射の変化
ウエザリング装置の中で太陽放射をシミュレートするためには、完全に定義された “標準太陽” が要求されます。 太陽は何十億年も存在し、少なくとも紫外線、可視光線、及び赤外線を調和させ、極めて恒常的に放射し続けており、人間が作った標準に従わせることはできません。最初に国際的レベルとして承認された “標準太陽”はCIE 公報20、1972 年の中に定義されています。この文書は、ソーラーシミュレーション試験用として現在でも有効とされています。測定技術の進歩に伴い、CIE 公報85では、同 20号よりも細かいステップの“標準太陽”、及びより正確なデータを定義しています。この項で表示されている紫外線、可視光、及び赤外線放射値は、新公報 85から引用したものです。
太陽放射における気候的影響
直接放射は太陽から地表に直接到達する放射エネルギーで、大気の拡散放射を除いたものです。放射測定を行うに当たって、放射エネルギーは太陽面に対して6°以内の視野のものと定義されています。拡散放射は、大気により拡散した放射エネルギー成分なので、180°視野の全ての (直接放射とは定義されない) 角度で地表の暴露面に到達します。そのため、水平表面は直達日射と拡散太陽放射の両方を受けることになります。これを全天日射と呼びます (下の図参照)。
直接放射と拡散放射を簡単に理解する一つの方法として、高層ビルディングを想像してください。直接光はビルディングの鮮明な影を作り出し、拡散放射光は全体的な環境光を作り出します。このことは、そのビルディングの影の中に立ち、影とビルディングを見ることで分かります。
後で説明しますが、試料が受ける太陽放射量を増大させるため、又は試料の最終使用条件をより良くシミュレートさせるため、ある程度の傾斜を付け、自然条件の中で暴露するのが一般的です。前に説明したように試料表面は、このような条件下で直接放射及び拡散放射を受けます。更に、地表に反射して戻り、 試料表面に到達する放射 (場合によってはアルベド放射として紹介してあります) があります。地表に反射して戻る放射量は、地面を覆っている材料に依存しています。裸岩、砂、又は砂利は、緑で覆われた地面よりも多くの放射エネルギーを反射します。水や雪は、より多くの放射エネルギーを反射します。
地表に到達する直接放射の割合は、大気条件に強く影響されます。水蒸気 (湿度)と汚染は、拡散放射エネルギーの量を増大させます。砂漠気候では亜熱帯気候よりも、より多くの直接放射エネルギーがあります。これは、砂漠では水蒸気が亜熱帯気候よりも、はるかに少ないために起こります。対照的に、高レベルの汚染は、直接放射エネルギーの量を劇的に減らします。
材料に照射される直接、拡散、及び反射放射の割合は暴露の角度及び大気条件により決定します。
レイリーの法則に基づくと、短波長の放射は長波長に比べてより多く拡散します。したがって、直接放射中の UV(紫外線)の割合は全太陽放射におけるUV(紫外線)の割合よりも少量です。この差は、全太陽光放射 量(太陽スペクトル全波長域) とUV(紫外線)の放射量を比較したグラフで見ることができます 。(下の棒グラフ参照)
太陽の方向に向けて様々な角度で受けた放射エネルギーを考慮する場合、直接及び拡散放射について検討することが重要です。南フロリダのような亜熱帯気候では湿度が高いため、晴天時には、UV放射の約50%が拡散されます。フロリダでは曇天の日が多く、結果として、拡散放射の割合が更に増大します。南フロリダのような亜熱帯気候の中で太陽放射を最大にするには、試料を水平に近い
傾斜角 (例えば 5°)で暴露しなければなりません。アリゾナアリゾナのような砂漠気候の場合は、直接放射成分 (75 %) の中に占める UV 放射の割合も大きくなります。これは、一年を通して暴露サイトの
緯度角に近い角度で試料を暴露すると、最大の放射露光量が得られることを意味します。試料によって異なる暴露角度の選択については、本書の後の項で説明します。
季節変動は、亜熱帯気候と砂漠気候の両方に存在します。変動の合計は暴露角度と気候、特に直接放射と拡散放射の異なった比率を引き起こす大気条件に依存します。中部アリゾナのような砂漠環境では、直接放射エネルギーの割合が高いため、そこでの5°暴露では激しい季節変動が起きます。 南フロリダで行った 5°暴露では、水蒸気による散乱のためにUVは比較的に一定しています。緯度角 (南フロリダ26°、中部アリゾナ34°) で行った暴露では、これら両地域の地表に対して、太陽が年間を通し垂直となるため、結果として、季節変動が最小となっています。中部アリゾナでは直接放射の総量が多い34°暴露が最適です。総体的に南フロリダでは放射エネルギーが多量に拡散するため、45°ではUVがより少なくなります。
空はなぜ青いか?
この質問は、世界中の子供たちから毎日のように聞かされます。答は、私たちの解説と拡散放射に関連します。レイリーの拡散法則によれば、光の短波長は長波長よりも多く拡散します。太陽スペクトルの可視部における最短波長は青色です。大気がプリズムの役割を果たし、可視光部の全波長を拡散させます。短波長の青色は、他のどの色よりも拡散し、レイリーの法則に従って青空ができます。拡散光ビームは必ずしも消散しませんが、どちらかといえば、通常のコース(経路)からそれます。これは、ビームが吸収される可能性が極めて大きいことを意味しています。
材料に与える放射エネルギーの効果
放射露光量は、材料の劣化を理解し、耐候性試験の期間を決めるのに重要な要因となります。しかし、それは50% は真実であることを教えてくれています。つまり、放射露光量は、材料の表面に与えられた放射量を教えてくれますが、その放射がどのように材料に
吸収されたか、何も伝えてはくれません。
グローアトウス・ドレーパーの原理によれば:
「システム (系) 中のどのような構成要素であっても放射を吸収して、最初に起こる現象は光化学反応である。」とのことであります。
これを素人の言葉に置き換えると“材料に放射すると、材料は変化することがある”となりますが、黒色塗料は、可視光のほぼ全波長を吸収しますからから、太陽光で劣化するのか? との質問に対する解答は「塗料の化学的性質を理解し、どの放射波長がその塗料の劣化を起こさせるのかを理解すること」となります。種々のポリマーを構成する分子構造は、それらが吸収する放射に影響されやすいものです。このほかに劣化の基本原理として、次のものがあります:
「分子に吸収されるエネルギー量が、結合エネルギーを超えると劣化原因となる。」
吸収された放射が、分子構造を支えているエネルギー以上のエネルギーを持っていれば、重合体結合を変化
させ、劣化が始まります。前に説明しましたように、短波長の方がより高いエネルギーを持っていることが
分かっています。したがって、材料の耐久性を検討する場合、地表に到達する最短波長領域としての UV (紫
外線) が、太陽光の最も重要な部分であることが簡単に理解できます。
例えば、下のグラフを考えてみると、プラスチックを 310nm以下の光に暴露すると、放射エネルギーを吸
収して劣化することが実験により分かりました。分光分布のグラフから、自然の太陽光に 295nm の低い放
射が含まれることが分かります。二つの曲線の下の領域は、その材料に対して有効な放射照度を示し、この
曲線は、その材料の
活性化スペクトルとして知られています。これに関して当然のことですが、ウエザリング
テストを実施する上で、その放射波長は、化学結合を変化させるのに十分なエネルギーを含んでいるか? 材
料は劣化するのか? どのようなタイプの劣化を確認できるか? どうすれば確信がもてるか? といった疑
問が生じます。
要約すると、放射効果の結果として起こる材料の劣化特性は、次の各項目に依存しています:
- 材料に露光された放射エネルギーの質と量
- 材料に吸収された放射波長
- 吸収された放射が材料劣化の誘因である化学変化を引き起こすのに十分なエネルギーを持っているか
どうか
今まで、短波長放射によるポリマーに及ぼす変化を論ずるのに時間を費やしましたが、変退色については高分子マトリックスの変化に部分的に関連があるだけでした。顔料や染料に使用されている高分子マトリック
スの変化は頻繁に起こります。染料と顔料は、可視光範囲の波長を吸収し(吸収しない場合は着色しませんが)、UV-A 放射と可視光によって損傷を受けます。顧客の側から見た場合、材料の性能を評価する上で変退
色は、最も重要なパラメータの一つであります。多くのアプリケーションに適用できるように、全太陽放射分布をシミュレートすることが必要です。

放射中の短波長は、長波長よりも材料の化学的性質に影響を及ぼすエネルギーをより多く含んでいます。
左列に定義した波長エネルギーは、中列に記載されている結合エネルギーよりも高く、それらの結合エネルギーに化学変化を促します。しかし、この項に記述してあるスペクトル感度の概念を忘れてはなりません。
温度
太陽放射に暴露される材料の
温度は、放射効果に影響を及ぼします。通常、
光化学反応は、温度の上昇に
より加速されます。更に、温度は、次の反応速度のステップ (段階) を決定します。これらの二次的反応は、
アレニウスの式を使用することで有効となります。一般的な経験則から、材料の温度が 10℃上昇するごとに反応速度は二倍になると推定されています。しかし、これは、物理的測定や外観変化では分からない場合があります。また、より高い温度で始まる
熱化学反応は、低温では全く起こらないか、又は極くまれにしか起こらない場合があります。
自然の太陽光に暴露される材料の温度は、多くの要因 (ファクター) によって決まります。試料の表面温度
は、雰囲気温度、試料の太陽光吸光率、太陽放射照度、試料の熱伝導率の一関数となります。したがって、
太陽光の下では対象物の表面温度は、通常、空気温度よりもかなり高くなります。可視と赤外の両領域にお
ける
太陽光吸光率は色と密接に関係し、白色表面 20% から黒色表面90% ヘと変化します。このように色
の異なる材料は暴露すると波長により異なった温度になります (下のグラフ参照)。また、色による表面温度依存
性も材料に二次的 (非熱化学) 効果を及ぼします。例えば、表面温度が異なると、カビや他の微生物は材料
の色によって異なる割合で発生し、増殖します。白色、又は明るい色の材料は、暗い色の材料に比べて、よ
り多くのカビが “成長”する可能性があります。
一般的に、金属の
熱伝導率と
熱容量は、プラスチック被着材に比べて高いので、かさの大きなプラスチック
材料より、塗装、又はコーティングした金属表面の方が非常に高い表面温度となります。暴露中の周囲空気
による影響として、
周囲空気温度、
蒸発速度、及び
対流冷却すべてが材料温度を構成する役割を果たすため、
劣化速度に影響を与えます。
水(湿気)
水は湿度、雨、露、雪、霰の形で私たちの環境のいたるところにある物質の内の一つです。屋外で使用される全ての材料は、これらに暴露され影響を受けます。
水は二通りの方法で材料に影響を及ぼします。合成材料、及びコーティング材料 (塗料) の湿度や直接的な
濡れによる水の吸着は、物理的影響の例です。表面層が湿気を吸収し膨張するので、乾いた表下層でストレ
ス (応力) が発生します。乾燥している期間、又は水の脱離期間を経過すると、表面層の収縮ヘと誘導され
ます。水和化した内部層がこの収縮に抵抗し、表面に応力き裂を発生させます。水和状態と脱水状態との間
に変動が繰返され、応力破断が起きます(下の図参照)。
凍結・解凍サイクルは、物理的影響の一つとして作用します。水は凍結すると膨張するので、材料に吸収された湿気は皮膜の中で膨張し、塗膜の剥がれ、き裂、フレーキング (薄片状剥離) を引き起こすストレス (応力) となります。雨は、表面から定期的に汚れと汚濁因子を洗い落とし、長期にわたる劣化速度に影響を与えます。その劣化速度は、水の水量よりも洗い流す回数で決まります。雨が暴露表面を打つとき、蒸発作用で表面が急激に冷却され、それが材料に物理的な劣化を引き起こします。霙や霰は、衝撃性とともに強力な運動エネルギーを持っているため、材料に物理的な劣化を引き起こします。

高分子材料の劣化は、材料表面上の水 (雨、又は露) の量よりも、濡れていた期間に、より多く依存します。表面が濡れていた全期間を濡れ時間と呼びます。例えば、突然にわか雨が、ほんの数分間降った場合と、霧雨がしとしとと長時間降り続く場合と、同じ雨量であっても大きな違いがあります。材料への水分の浸透度、及びウエザリング挙動への影響は、にわか雨のケースよりも、霧雨のケースの方がはるかに大きくなります。
水も化学的な意味で、直接劣化反応に関係することがあります。着色コーティングした被覆材料の中や、ポ
リマー中の酸化チタン (Ti2) 顔料の
チョ―キングは良い例です。ポリマーの組成が放射エネルギーによって
変化している一方で、材料表面の劣化は増大します。たとえそのような変化が生じた場合でも、劣化は化学
的に吸収された湿気のサイクル活動によって増大します。どのような場合でも、水の接触は酸化劣化を加速
します。特に
酸性雨の影響を考慮する場合、湿気がpH調節装置の役割を果たし、多くの塗装品やコーティ
ング製品 (塗料) にエッチングを引き起こします。
3.二次的効果
劣化を引き起こす要因である、天候や大気の二次的効果を低く評価することはできません。大気中の
ガスや
汚染物質は、特に
酸性雨という形でまったく新しい反応を引き起こす可能性があります。 高度に工業化された地方では、酸性雨がいろいろな種類の材料に影響を及ぼし、ウエザリング作用を促進させる要因となります。大気中の汚染物質や埃は、材料の分子構造に化学変化を起こすことはありませんが、ウエザリング作用に効果を与えます。その効果には、材料の汚染度合いや紫外線放射を選別することを含みますが、その材料が紫外線を吸収するものに限ります。“ワニス”を材料表面に塗布し、ある気候条件下で暴露すると半永久的な被覆となります。
かび、
細菌、及びその他の微生物学的因子は、一般的には、ウエザリング因子と見られないかも知れませんが、熱帯や亜熱帯気候では、材料劣化を起こす重要な役割を演じます。大自然の行為は、直接に代表的なウエザリング作用に影響を与えないかもしれませんが、
エルニーニョ、
ラ・ニーニャ現象や
火山活動が気象条件に影響を及ぼす可能性があります。それは結果的に、劣化形態、劣化速度に影響を与えます。
これらの二次的効果が強化される環境で行う試験は、色々な耐候性に適用するために極めて重要です。
耐候性試験に及ぼすエルニーニョの影響
エルニーニョ現象が起きている期間中は、低緯度にあって、大西洋を覆う典型的な貿易風は減少し、東大西洋、及び西大西洋の海水の標準的な温度分布を変えてしまいます。この風がないと西大西洋の暖かい水を覆っている大気(熱源)が東に移動し、地球の標準的な大気循環を変化させてしまいます。これは全世界の気象条件を変えて、最終的には自然耐候性試験を変えてしまう原因となります。
ている試料には、埃が付着しているのは当然のことです。塵や埃の堆積は自動車塗料、窓枠、及び窓用シーリング材を含む多種類の材料に対する評価基準となります。興味深いことに、フロリダでは試料上に定着した塵は、その他の地方の塵とは同じように形成されません。埃の堆積に関する研究のほとんどは、アフリカのサハラ砂漠の研究に端を発していることが証明されています。そのサハラ砂漠では、砂が偏西風の運動により、ハリケーンを発生させる貿易風に乗り、大西洋を飛び越えて飛来し、堆積してできたものです。定期刊行誌 National Geographic によれば、毎年一億トン以上の砂塵がカリブ海地方へ堆積されることになります。
4.相乗効果
太陽放射、温度、湿度、及び二次的効果が製品上で演じる役割を考えたとき、これらの因子が材料を劣化
させるために、同時に作用することを理解しなければなりません。例えば、材料がこれらの因子の内の一つだけに暴露されたときと、すべての劣化因子が劣化作用を及ぼす屋外条件下で材料が暴露されたときでは、材料が受ける劣化は同じになることはありえません。
暴露される材料により、劣化因子の相乗効果は変化します。製品性能の小さな変更、例えば、安定剤、難燃剤、充てん剤、その他の添加物は材料の分解特性を変化させます。リサイクル材料の高分子マトリックス中の不純物や製品加工特性はウエザリング性能の補助変数となります。純粋なポリマー、安定剤、特定のアフターサービス (補修) 市場製品の耐久性に関する刊行物は何千とありますが、ウエザリングによる材料の耐久性について科学的に正しく評価したものはありません。すべての材料に対するウエザリング因子の影響を完全に理解することは、不可能であると言っても過言ではありません。
5.気候
世界の気候図を見れば、様々な種類の気候が存在することは明らかです。これらの異なる気候は、緯度、
気象パターン、地形、地理的な特徴の結果です。(下図参照)
世界の全ての気候に対して、材料のウエザリング特性を決めることは現実的ではありません。したがって、暴露試験のために選ばれる気候は、材料の既知の耐候性と製品の予想される耐久性需要に基づいて選定します。耐候性試験のために適切な気候とテストサイトを選ぶ場合は、材料の主な販売分野を考慮しなければなりません。もしも、材料が帆布ならば、試験における気候は、海岸の船舶の条件に設定します。しかしながら、塩分を含んだ空気の影響は、海岸から 12kmが有効な範囲なので、このテストサイトの条件は、世界のあらゆる場所で使用される材料には相応しくありません。
材料は種類によって特定の環境パラメータ・グループに反応します。湿度、雨、
塩水噴霧は金属を
腐食させ
ます。紫外線放射、温度、湿度はプラスチックス材料及びコーティング材料 (塗料) を劣化させます。
七大主要気候
界気象機関(World Meteorological Organization [WMO])は地球を取り囲む気候として、次の七大主要気候に分類しました。
- 乾燥 (砂漠) 気候
- 亜熱帯気候
- 多湿冷涼気候
- 多湿中気候
- 寒帯気候
- 熱帯気候
- 未分化気候
耐候性試験のためのベンチマーク (基準) 気候
耐候性試験を実施するための二つの最も重要な(又は、ベンチマーク)
気候は、南フロリダのような亜熱帯環境と中部アリゾナのような砂漠環境です。他の気候も時々特定の耐候性試験のテストサイトとして使用されることもありますが、亜熱帯環境と砂漠環境は、屋外に暴露される材料の最終使用条件として要求される気候の中で、世界中で最も厳しいものとして認められています。
塗料業界で製品のウエザリング耐久性に対する関心が次第に高まり、1920年代と1930年代に南フロリダの
亜熱帯気候で最初に暴露試験を実施しました。最大の独立したテストサイト、例えば、
アメテック・アトラス事業部 (AWSG、Atlas Weathering Services Group) の南フロリダテストサイトは、内陸地に位置し、海岸で発生する塩による腐食効果を少しも受けることがありません。砂漠環境の屋外ウエザリング・
サイト、例えば、
アメテック・アトラス事業部の中部アリゾナテストサイトは、より高い
平均温度、年間を通して極端な温度差を与えます。これは、自動車の内装材に世界中のどの気候よりも高い
ストレス (応力) を与えます。これら、ベンチマーク(基準) 気候における独立テストサイトは、産業、又は
都市公害の影響を最小限にするために大都市圏の外側の地域に設営されています。
南フロリダ-AWSG
南フロリダAWSGは、南フロリダの大気汚染の無い亜熱帯環境の都市、マイアミ市の北西部 約33Km(20マイル)に位置し、高温、多湿及び豊富な全紫外線量が得られるため、長年屋外暴露試験のベンチマーク(基準)とされています。
中部アリゾナ AWSG
中部アリゾナ AWSGは大気汚染のない砂漠環境にある首都フェニックス市の北方約 50km(30マイル)に位置し、ここの気候は、昼と夜の大きいな温度差、低湿度、太陽光の高放射が得られるため、多くの材料の耐候性試験に最適です。
その他の気候
世界中の特定の製品市場にとって重要な気候条件、つまり、その他の気候条件でも試験は実施されます。
例えば、世界中の多くの海岸の耐候性試験・サイトでは、特に塩分を含む大気による腐食効果の試験を行います。
オランダの
ローチェムのAWSG テストサイトは、特にその地域で使用される製品を独自の耐候性試験で評価しているヨーロッパの会社や研究所に屋外暴露試験を提供する目的で設立されました。いくつかの石炭火力発電所があるオハイオ渓谷に近い
ケンタッキー州ルイビルの AWSG のテストサイトは、一定量の産業汚染物質に暴露するためのサイトです。これらの汚染物質は空気中の湿気と混合し、酸性雨を形成します。酸性雨ヘの暴露は、高温多湿で特徴づけられた北方気候の温度を伴った夏と凍結・解凍サイクルを伴う冬が結合して、
家屋用ポリ塩化ビニル (PVC) 外壁板のような建築材料の試験条件を規定します。
フランスのサナリー (Sanary)、オランダのフーク・バン・ホランド(Hoek van Holland)、 日本のテストサイト、オーストラリアの カラハリ(Kalahari、南半球でのベンチマーク[基準]気候を代表する場所)は、特定用途用屋外暴露地域として認められています。
アトラス社の世界中の暴露試験ネットワーク

自動車塗料用専門試験
フロリダ州ジャクソンビル
フロリダ州ジャクソンビルは、米国最大の自動車輸出入センターです。このサイトは、比較的高い年間放射エネルギーと湿度を得られますが、汚染原因となるいくつかの工場があるため、独特な環境となっております。改良開発されたベースコート/クリアコート塗料システムで塗装したいろいろな車が米 国の自動車ディーラーに配送さされるまでの待機期間中に、この地域の特別な環境条件で生じた酸により外装塗装上にエッチング現象が発生しました。これらの自動車は販売できる状態ではなく、販売するためには、補修を施さなければならず、メーカーの懐疑心を引き起こしました。多くの自動車メーカーは自動車塗料システムを採用する前に、耐酸エッチング性が認められるまで、このサイトでの暴露試験を行うよう塗料メーカーに要求するようになりました。
オランダ、ローチェム
オランダ、フーク・
バン・ホランド
フランス、サナリー
6.ウェザリング(風化)要因の測定
放射
使用する放射計は放射エネルギーを検出し、 測定する装置で、一般的なクラスのものです。通常、二種類
の放射計が太陽放射の測定に使用されます。 全太陽放射 (UV [紫外]、VIS [可視]、IR [赤外])を測定するものは全天日射計と呼ばれています。 放射の視野角 180°で測定します。 他には TUVR、つまり、全紫外線放射計があります。これらの装置は放射照度を測定し、 時間で積分し、 放射露光量を表示します。 露光角度により放射エネルギーを受ける量が変わるので、 放射測定は露光角度に合わせて行います。
その他の放射計の一つとしては、特別用途の直達日射計があり、これは太陽からの直接放射だけを垂直入射で測定するためのコリメーティングチューブ (視準筒) を使用しています。
UV (紫外線) 分光放射計による測定
放射露光量に関して異なった試験条件下で行われた試験の評価及び結果比較は、 校正された分光放射計
を使用することで可能となります。 1~2 nmの精度で測定し、分光分布を記録し、 設定され波長範囲で合
計し、正確に表示します。暴露試験で“紫外線放射”を正確に制御することで得られる利点を別にすると、 分
光放射照度の測定も試験と試験結果を分析するための重要な道具となります。
すでに述べたように、 自然及び促進ウエザリングで暴露される材料は、各々それ自身、 特有の分光感度を持
っています。 この感度は、 ある一定の物理特性や外観特性の変化に関係があります。 材料がテストサイトで
早く劣化するならば、 試験室で規格条件に従って試験を行っても早く劣化する可能性があります。これは、低
波長放射の特定な範囲が、この材料に強力な効果を与えることが原因と考えられます。材料の相対分光感度
と光源の詳細な分光分布が分かっていれば、 試験結果は、高精度でより優れた分析判断を行うことができま
す。UV分光放射計は、その光源の分光分布の詳細なデータを提供します。 これらのデータは促進試験法に
対してより大きな信頼を与えます。
固定型放射計とラック
暴露角度と測定する波長範囲により、様々な太陽放射モニタ装置が使用されます。
ウエザリングにおけるその他の要因の測定
ウエザリング要因、例えば雰囲気温度、 湿度、 雨等を正確に一貫してモニタすることは重要です。 雰囲気温度と相対湿度測定装置を収納するためのエンクロージャ (百葉箱)は
世界気象機関(WMO、World Meteorological Organization)で指定されています。 WMO型エンクロージャは、二つの屋根を備えていなければなりません。 エンクロージャの最上部の屋根とその下の屋根との間に小さな空気の層ができます。 これによって、 エンクロージャの天井に照射される放射エネルギーから内部を保護できます。エンクロージャはまた、
ハウジングの中を風が通過するための空気取り入れ口を備えていなければなりません。 更に、地面で反射した太陽放射が、雰囲気温度や相対湿度に影響を及ぼさないよう、地上から決められた高さに固定しなければなりません。
データ取得システムは太陽放射、温度、及びウエザリングの多くのパラメータをモニタするのに使われます。 このシステムは製品寿命の予測モデルを開発するためには不可欠な情報源となります。
風速及び水平風向センサー、 雨量計、 濡れ時間センサー、 及び放射計は、主な気候パラメータを連続的にモニタするために、すべてデータ収集システムに接続されています。
屋外耐候性試験で、全ての試料の温度を測定することは実用的ではありません。 そのため、それに代わり、一般的にブラックパネル(及びホワイトパネル) 温度を測定します。 ブラックパネルは、黒色塗料の高い太陽光吸収率を利用し、 暴露した試料が到達する最高温度の標準として用いられます。 パネルは通常、 薄い金属下地(ステンレス板鋼やアルマイト加工を施したアルミニュームの板)で、プライマーと上質(エナメル系)の黒色塗料でコーティングされています。 ブラックパネルは温度制御装置として、主に研究室ウ
エザリング装置に使用されます。 規格機関は使用する塗料の特性・仕様、 ブラックパネルのモニタヘの出力方法、温度測定装置としての取付け方法を規定しています。
ここまで、私たちはウエザリングにおけるそれぞれの主要因が、材料に及ぼす影響・効果、及びそれらの測定方法について論じてきました。 次に、 私たちの関心を一般的な暴露方法と応用へと向けて行きます。
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